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豚ぷんペレット製造から販売までの道のり

食品廃棄物を活用した豚ぷん堆肥の製造・販売で、環境問題と農業の未来に挑む富士見工業社。異物混入や強い臭気という課題を、製造元のブライトピック社との二人三脚で乗り越え、年間756トンの安定供給を実現。農林水産省からも注目される環境配慮型ビジネスのモデルケースとなった、その舞台裏に迫る。
今回はその立役者となった有機農業本部購買部 副部長 市山氏・北海道本部 有機農業部 チームリーダー 柳谷氏にインタビューを敢行した。

プロフィール

―― お二人の社歴についてお聞かせください。

市山:購買部に所属し、社歴は4年になります。「取引先様と社内の懸け橋になること」をモットーに、取引先と社内のニーズを繋ぐ役割を担っています。相手の立場を考え、課題を深く理解し、双方の連携を深めながら価値ある解決策を提供するよう心がけています。

柳谷:私は入社6年半で、北海道の営業担当として主に道東エリアを担当しています。北海道特有の流通事情に詳しく「取引先へのきめ細やかなサポート」を大切に日々業務に取り組んでいます。

プロジェクトの始まり

―― このプロジェクトはどのようにして始まったのでしょうか?

 

 

市山:2022年5月、農林水産省のご紹介でブライトピック社と初めてお会いしました。同社より、豚ぷんを原料とした新しいペレット堆肥の製造に関するご提案をいただいたのがきっかけです。
最初にご提供いただいたサンプルには強い臭いがあり、プラスチックなどの異物も混入していて、正直なところ取り扱いが難しいと感じました。
実際に現地を訪問すると、製造工程にも多くの課題があることが分かりました。しかし、国内では豚ぷん堆肥ペレットを取り扱う業者が少なく、需要の高まりを考えると「ぜひ形にしたい」という思いがありました。

 

※最初のサンプル。当初は臭いも強い上に、プラスチックなどの異物も混入していた。

課題解決への取り組み

―― その課題をどのように解決されていったのでしょうか?

市山:ちょうど新しい取り組みを進めようと考えていた時期に、私自身が体調を崩してしまい、しばらく現場に関わることができませんでした。その間、社内での連携不足もあり、ブライトピック社との関係に危機感を抱きました。復帰後はまず「信頼関係の構築」に力を入れ、一方的に要望を伝えるのではなく「一緒に考え、一緒に進む」という姿勢を大切にしました。
このアプローチを続けた結果、相手側も少しずつ歩み寄ってくれて、課題を共有できる関係性が築けました。その後は「現行の製造工程でどう改善できるか」を共に考え、具体的な提案を行いながら解決策を模索していきました。ブライトピック社も前向きに対応してくださり、特にプラスチックの除去については、私たちの提案を上回る改善を実施していただきました。現在では、目視できる異物はほぼゼロのレベルまで達しています。

 

 

柳谷:北海道での流通経験がないこともあり、初めてトレーラーに積み込む際には私が立ち会いました。その後も定期的に情報共有を重ねながら業務に取り組んでいます。
現場では新たな課題もいくつか生じましたが、中でもフレコンバッグへのパッキングが困難であったため、規格の変更を行いました。既存規格に現場を合わせるのではなく、現場の声を反映してフレコンバッグのサイズアップを実現するため、埼玉県でサンプルをレンタカーに積み込み、そのまま千葉県のブライトピック社へ直接持ち込み、当日トライアルを実施するなど、スピード感を持った対応が可能となりました。この取り組みにより、先方への負担も最小限に抑えつつ、スムーズな改善が実現できたと感じています。

 

 

製造工程の改善

―― 製造工程の改善について、具体的な取り組みを教えていただけますか?

市山:最大の課題は「発酵期間の見直し」でした。当初は製造効率を優先し、発酵期間を短く設定していましたが、その結果、臭気に関する問題が浮上しました。
この課題を解決するために発酵期間の延長を提案しましたが、発酵期間を延ばすと生産量への影響が懸念されました。そこで、工場のスペースを有効活用する新たな製造工程を構築するなど、ブライトピック社と協力しながら慎重に検討を重ねました。その結果、無事に改善案を実現することができました。
この取り組みにより、製品の臭気が大幅に改善されたことはもちろん、工場内の作業環境も向上しました。また、弊社が定期的に製品を引き取る体制を整えたことで、工場での堆肥滞留を防ぎ、周辺環境への影響も最小限に抑えられるようになりました。

北海道での販売展開

―― 北海道での販売展開について教えていただけますか?

柳谷:北海道ではもともと豚ぷん肥料の需要があり、供給が追いついていない状況だからこ そ新商品でも受け入れてもらいやすかったと思います。
当初、500kgのフレコンバッグのみの製造だったため、ポリ袋製品を扱っている農協様には声を掛けにくい面がありましたが、可能性のある農協様へアプローチを進め、取り扱いにこぎ着けました。また、当初の臭気に関する課題についても農協様と何度も打ち合わせを重ね、改善状況や取り組み内容を随時報告しました。
工場の協力もあり、製造工程の一部改善により臭気が軽減され、現在では多くの量を農協様に取り扱っていただいています。

販売実績と評価

―― 具体的な販売実績を教えていただけますか?

 

 

柳谷:現在、ブライトピック社の年間生産量約900トンのうち、弊社が約8割を扱わせていただいています。月平均で63トンを引き取り、年間12回のペースで安定した取引を続けています。
また、1年間の流通実績を踏まえ農協様へのヒアリングを実施したところ、特に臭気の改善に関して高い評価をいただきました。このフィードバックが、さらなる改善のモチベーションとなっています。

市山:ブライトピック社に対する引き合いが非常に増えており、他社からの問い合わせも多く寄せられています。それでも、これまで築いてきた信頼関係のおかげで、弊社を優先的に対応していただいています。
また、現場からは「市場に出た製品の異物の少なさや均一性が好評」という声が多く寄せられており、これまでの製造プロセス改善が確実に成果に結びついていると実感しています。このような反響は、今後のさらなる取り組みに向けた大きな励みとなっています。

製品の特徴と環境貢献

―― この製品の環境面での意義についてお聞かせください。

 

 

市山:この事業の大きな特徴は、廃棄物の有効活用です。ブライトピック社では、コンビニエンスストアの食品廃棄物などをエコフィードとして活用しています。SDGsの観点からも注目される取り組みです。

柳谷:製品の特徴として、リン酸値が高く、多様な微量要素を含む点が挙げられます。お客様の圃場では良好な結果が報告されており、「後利き」も強いと評価されています。この評判が口コミで広がり、さらに需要が高まっています。また、ペレット状のため、散布作業にも問題なく対応いただいています。

社会的評価

―― 本事業は外部からも評価されているそうですね?

市山:はい、ありがたいことに、農林水産省主催の畜産環境シンポジウムで、ブライトピック社が弊社との取り組みについて発表してくださいました。その際、傍聴されていた企業の方から「どうしたら富士見工業のような企業と出会い、取り組みができるのか」という質問が寄せられました。
このような声をいただけたこと自体、弊社の存在や価値を高く評価していただいた結果だと感じています。

今後の展望

―― 今後の事業展開について、具体的な目標はありますか?

柳谷:現在の年間取扱量756トンを将来的には1,000トンまで拡大していく計画です。ただし、品質を維持しながら計画的に進めていく必要があります。

市山:製品形状にこだわることなく、市場のニーズや技術革新に柔軟に対応し、使いやすさや環境負荷の軽減を追求していきたいです。また、弊社はこの製品に限らず、畜産堆肥を「地域農業を支える選択肢」として広め、持続可能な農業を実現するための普及と改善に取り組んでいきます。これにより、農業と環境の両面で貢献していきたいと考えています。

最後に

―― 富士見工業社を通して実現してゆきたいことはありますか?

 

 

市山「信頼の架け橋を広げ、持続可能な農業の未来を創る」ことを目指しています。取引先との関係構築だけでなく、より多くの人々や企業を繋ぐ信頼のネットワークを広げていきたいです。また、さまざまな取り組みを通じて、地域農業の支援や環境負荷の低減にも貢献したいと考えています。

柳谷:中小企業だからこそできる挑戦があると確信しております。今後も弊社を通じて社会に広く貢献し、これまでの実績を土台に、新しい事業提案ができるよう目指していきたいです。

 

インタビュー
社長室 坂部 幸成

会社概要

【社名】富士見工業株式会社
【住所】〒422 – 8026 静岡県静岡市駿河区富士見台1-21-22
【URL】https://fujimi-group.co.jp/

本件に関するお問い合わせ

担当:社長室室長 山本縁
電話:054-282-2351(代表)
メール:y.yamamoto@fujimi-group.co.jp

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